あなたがネットで調べたこと、誰かに知られていませんか?VPNが守る検索履歴とプライバシー
はじめに
普段、私たちはインターネットで色々なことを調べています。今日の献立、気になるお店、趣味の情報、子供の宿題のことなど、本当に様々です。また、お気に入りのウェブサイトを見たり、ニュースをチェックしたりもしますね。これらの「何を調べて、どこを見たか」という情報は、実は知らないうちに誰かに見られている可能性があるとしたら、少し心配になりませんか?特に、家族みんなが同じインターネット回線を使っているご家庭では、プライバシーが気になることもあるかもしれません。
この記事では、あなたがインターネットで調べたり見たりした情報が、なぜ見られる可能性があるのか、そして「VPN」というものがどのようにあなたのプライバシーを守ってくれるのかを、初心者の方にも分かりやすくお話しします。安心してインターネットを利用するための第一歩として、ぜひ読んでみてください。
なぜ検索履歴や閲覧履歴が見られる可能性があるのか
私たちがインターネットを使うとき、パソコンやスマートフォンは、特定の情報を「インターネットサービスプロバイダ(ISP)」という会社を経由して、目的のウェブサイトやサービスに送っています。ISPは、あなたがインターネットに接続するために契約しているNTTやKDDI、あるいはケーブルテレビ会社などのことです。
インターネット上のデータは、例えるなら郵便物のようなものです。あなたの家(デバイス)から出た郵便物(データ)は、郵便局(ISP)を経由して、届け先の住所(ウェブサイトのサーバー)に届きます。このとき、郵便局(ISP)は、あなたが「誰に」「どんな封筒(どんな種類の通信)」を送ったか、つまり「あなたがどのウェブサイトにアクセスしようとしているか」という情報を知ることができます。多くの国や地域では、法律でISPに一定期間の通信記録の保持が義務付けられていることもあります。
また、ご自宅のWi-Fiだけでなく、カフェや駅などの公共のWi-Fiを使う場合も注意が必要です。これらのWi-Fiの管理者も、あなたがどのウェブサイトを見ているかといった情報を把握しようと思えばできてしまう可能性があります。悪意のあるWi-Fiの場合は、通信内容自体を盗み見ようとする危険性もゼロではありません。
あなたが検索した言葉や訪れたウェブサイトの情報は、このようにISPやWi-Fiの管理者に見られる可能性があるだけでなく、アクセスしたウェブサイト自体や、インターネット広告を配信する会社などにも様々な形で集められています。これらの情報が、あなたに向けた広告に使われたり、あなたの興味関心を知るために分析されたりすることがあります。これは必ずしも悪いことばかりではありませんが、「自分の行動が常に追跡されているのではないか」と感じると、あまり気持ちの良いものではないかもしれません。
VPNが検索履歴や閲覧履歴をどう守るのか
そこで役立つのがVPNです。VPNは「Virtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)」の略で、インターネット上にあなた専用の「安全なトンネル」を作るようなものだと考えてください。
VPNを使うと、あなたのパソコンやスマートフォンからインターネットのデータが出ていく前に、VPNアプリがそのデータを「暗号化」します。暗号化とは、データをバラバラにして、決まった方法でなければ元に戻せないようにすることです。まるで、大切な手紙を誰も開けられない特別な鍵のかかった箱に入れるようなものです。
この暗号化されたデータは、ISPのネットワークを通って、VPNサービスが用意した「VPNサーバー」に届けられます。ISPから見ると、あなたのデバイスとVPNサーバーの間で、たくさんのデータが行き来していることは分かりますが、その中身、つまりあなたが「何を調べているのか」「どんなウェブサイトを見ようとしているのか」は暗号化されているため、全く読むことができません。先ほどの郵便の例で言うと、ISPは「あなたが郵便局(ISP)から別の大きな郵便局(VPNサーバー)へ、鍵付きの箱を大量に送っている」ことしか分からないのです。
データがVPNサーバーに到着すると、そこで暗号が解かれて、本来のデータに戻ります。そして、VPNサーバーがあなたの代わりとなって、あなたが本当に見たいウェブサイトにアクセスします。このとき、ウェブサイト側から見える「通信している相手」は、あなたのデバイスのIPアドレスではなく、VPNサーバーのIPアドレスになります。IPアドレスはインターネット上の住所のようなものですが、VPNサーバーの住所になることで、あなたの本当の住所(IPアドレス)を隠すことができるのです。
つまり、VPNを使うことで、あなたのインターネット通信は「暗号化」され、ISPや公共Wi-Fiの管理者からは中身が見えなくなり、さらにウェブサイト側からはあなたの本当の場所が分かりにくくなります。これにより、あなたが「何を調べたか」「どんなウェブサイトを見たか」といった検索履歴や閲覧履歴が、これらの第三者から追跡されにくくなり、プライバシーが守られることにつながるのです。
VPNを使うことによる具体的な安心感
VPNを使ってインターネットを利用することは、ご家庭での安心感にもつながります。
- 家族それぞれのプライバシーを守る: お子さんが何を調べているか、ご主人がどんなサイトを見ているかなど、家族それぞれのインターネット利用について、プロバイダなどに情報が集まりにくくなります。ご家庭内での利用状況自体はルーターなどで把握できる場合もありますが、外部へのプライバシー漏洩のリスクは減らせます。
- 公共Wi-Fiでの安心感: カフェやホテル、空港などで提供されている無料Wi-Fiは便利ですが、セキュリティが弱い場合があります。VPNをオンにしてから公共Wi-Fiに接続することで、通信内容が暗号化され、悪意のある第三者による「のぞき見」からあなたの検索履歴や閲覧履歴を守ることができます。
- 行動分析やターゲティング広告の軽減: あなたのインターネット上での行動が追跡されにくくなることで、過度な行動分析や、それに基づいたターゲティング広告の量が減る可能性があります。(ただし、これは完全に防げるものではありません)
このように、VPNはあなたのインターネット上の行動、特に「何を調べたか」「何を見たか」というプライバシーを守るための、とても有効な手段と言えるでしょう。
どうすればVPNで検索履歴・閲覧履歴を守れるの?(具体的な手順のヒント)
VPNを使って検索履歴や閲覧履歴などのプライバシーを守るために必要なことは、実はとてもシンプルです。
- VPNサービスを選ぶ:
- 信頼できるVPNサービスを選びましょう。特に、利用者の通信記録(ログ)を残さないという「ノーログポリシー」を明確にしているサービスを選ぶことが、プライバシー保護の観点からは重要です。無料のサービスは、サービス維持のために利用者の情報を収集・販売している場合もあるため、注意が必要です。
- VPNアプリをインストールする:
- 選んだVPNサービスのウェブサイトから、お使いのパソコンやスマートフォン、タブレットに合ったアプリをダウンロードしてインストールします。多くの場合、数回のクリックで簡単にインストールできます。
- VPNをオンにする:
- インストールしたVPNアプリを起動し、ユーザー名とパスワードを入力してログインします。
- 接続したいVPNサーバーの場所を選んで、「接続」ボタンをタップ(またはクリック)します。多くのアプリでは、最適なサーバーに自動で接続してくれる機能もあります。
- 接続が成功すると、画面に「VPN接続中」のような表示が出たり、鍵のマークが表示されたりします。
これだけで、あなたのインターネット通信はVPNの安全なトンネルを通るようになり、検索履歴や閲覧履歴のプライバシーが守られた状態でインターネットを利用できます。インターネットを使わないときは、VPNアプリで「切断」することもできます。
補足・注意点
VPNはあなたのインターネット通信のプライバシーを守る強力なツールですが、いくつか知っておいていただきたいことがあります。
- ログイン情報による追跡: GoogleやYahoo!などの検索エンジンにアカウントでログインした状態で検索した場合、その検索履歴はVPNを使っているかどうかに関わらず、あなたのアカウントに紐づいて記録されます。VPNはインターネットの「通り道」を安全にするものですが、あなたがサービス内で自分だと名乗った情報(ログイン情報)までは隠せません。ウェブサイトやサービス内での行動履歴についても同様です。
- 完全に匿名になるわけではない: VPNはあなたの本当のIPアドレスを隠し、プライバシーを高めますが、インターネット上での行動が誰からも一切追跡されなくなる「完全な匿名性」を保証するものではありません。
- 他のセキュリティ対策も大切: VPNはプライバシーや通信の安全を守りますが、ウイルス感染やフィッシング詐欺など、インターネット上の他の危険から完全に守ってくれるわけではありません。信頼できるセキュリティ対策ソフトの利用や、怪しいメールやリンクに注意するといった基本的な対策も引き続き行うことが大切です。
VPNは、インターネット上であなたの「見られたくない」情報を守るための、数ある対策の一つとして非常に有効です。
まとめ
この記事では、あなたがインターネットで調べたり見たりした情報(検索履歴や閲覧履歴)がなぜ見られる可能性があるのか、そしてVPNがどのようにそれらのプライバシーを守るのかを解説しました。
普段何気なく使っているインターネットですが、実はたくさんの情報が行き交っており、あなたの行動が様々な形で記録されている可能性があります。VPNを使うことで、あなたのインターネット通信を暗号化し、本当の場所を隠すことができるため、大切なプライバシー、特に検索履歴や閲覧履歴が第三者から追跡されにくくなるという大きなメリットがあります。
VPNの導入は、少し難しそうに感じるかもしれませんが、信頼できるサービスのアプリを使えば、ダウンロードして「オン」にするだけで、すぐに安全なインターネット利用を始めることができます。
ご家族みんなが安心してインターネットを利用するために、VPNの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。まずはできることから、あなたのインターネットプライバシーを守る第一歩を踏み出してみてください。